ガボン国立輸血センター⑩ -広報部門-
びっくりするほど時間が経っていました。
元気にしています。
最近は協力隊の活動をお話する機会をいただきまして、ラジオに出たり、オンラインイベントで発表したりなどしています。
ちなみにラジオは青森県の青年海外協力協会のFacebookで聴けますので、興味のある方はぜひどうぞ!
「輸血に魅了された女性」としてがっつり紹介していただきました(笑)
さてさて、今回は輸血センターの中の広報部門についてお話します。
ここ数か月で驚くべき成長を遂げている彼らの頑張りを紹介します。
2018年に就任した敏腕センター長が力を入れていた一つがこの広報部門。
「あなたがあげたその血液はどうやって使われるか知っている?」
と聞くと、
「儀式に使われるんだろ?」
「献血」という言葉と、その正しい知識を広げることがいかに重要なのか分かりますよね。
私がこのセンターで働き始めた当初は何をしているのか分からないくらいひっそりとしていた広報部門ですが、セネガルでコミュニケーション学を学んだという新たな部門長が採用され徐々に変化を遂げていきます。
まずは、屋外での献血広報活動
数日後に出張採血が行われる予定の会場で、事前の広報活動を行います。
通りすがりの人に声を掛け、「献血を知っていますか?」「病気の人の命を救えるんです」「自分の血液型も知れますよ」など説明していきます。
私も一度参加しましたが、説明を受ける側がどんどん質問をしていくのがかなり印象的でした。
(学生に献血について教えています。結構大人に見えますが、学生です)
そして出張採血当日も、採血班と共に会場へ行きひたすらに勧誘をします。
企業やイスラム教などの団体に出向き、献血に関する講演をすることも始まっていきました。
(工事系の企業での献血事前講習)
広報部門用の帽子やベストが出来上がり、本格的に広報している感が出てきました。いい感じですよね。
やっと存在感の出てきた広報部門ですが、ある日突然部門長が解雇され再び勢いが失速し始めます。この国の突然の人事異動には心底驚きます。
この頃私は何を行っていたかというと、輸血センター内のカフェ(献血者に軽食を提供する場所)で満足度アンケートを行っていました。
目的は、今後の活動方針を決めて1年間でどこまで変えられたか達成度を見るためです。
主な質問事項と調査結果は、
・施設の清潔具合について … 汚い:2%、清潔:58%、とても綺麗:38%
・献血時の待ち時間について … 長い:19% 、適切: 73%、短い: 8%
・施設の職員の態度について … よい、好感が持てる:100%
・「感染症の検査結果」を返却しているサービスを知っているか … はい90%、いいえ10%
・施設の営業時間について知っているか … はい60%、いいえ40%
・施設のFacebookについて知っているか … はい1%、いいえ99%
・献血された血液がどうやって使用されるか知っているか … はい55%、いいえ41%
・また献血をしたいか … はい:92%、いいえ:5%
意外とこの1時間くらいの待ち時間でも満足なのかとちょっと拍子抜けし、ほんとにまた献血したいって思ってるのかよなど予想外の結果が出ました(笑)
でもしっかりと問題点も判明し、施設のサービスについての広報が不足していることが分かったため、これに重点をおく活動をしていくことに決めました。
しかし、どうやって広報を行うか…
案内を作って壁に貼る?ポスターを作る?貼ったところで施設長が剥がすに決まっている…
ならば貼らない方法で、物がなくても作れて、私が居なくなっても残るくらいきちんとしたものを…
皆さんならどんな方法を考えるでしょうか?
私が考えに考えて作ったのが、カフェのテーブルに置く小さいPOPです。
↓ 施設のオープンとクローズの時間を教えるPOP、絵は私が描きました。
↓ 献血後に受けとれる感染症の検査結果の受け取りについて説明するPOP
(どちらにもしっかりFacebookの存在を教えるロゴも入れました)
綺麗なものを好むガボン人なので、デザインや字体は美しくすることを第一に心掛け、その中で伝えるべき情報を確実に記載して、大きすぎず小さすぎないサイズにしました。
Apple pencilも駆使しして絵も描きました。
日本だったら百均でカードホルダーなど売っていますがガボンにはありません。
でもテーブルに置きたかったので工夫した結果、JICAにあるラミネートを利用して上手く折ることでテーブルに置けるタイプのPOPを完成させました。
「有るものから無いものを作る」、わくわくさんを見て育ってきた私の勝利です。
美しく仕上がったのでガボン人も受け入れてくれ、カフェのテーブルだけでなく受付などにも置いてくれました。
そしてここからどう変わっていったか…
本来であれば帰国前に同じアンケートを行い、いかに効果が出たかを数字で見たかったのですが、残念ながらコロナで早期帰国したため1年後の達成度をはかるアンケートは実現しませんでした。
かなり悔しいですが、実は大きく成果が表れたものがあります。
それはFacebookのフォロワー数。
アンケート実施時はセンターのFacebookフォロワーはほぼ輸血センターの関係者ばかりで200人程度でした。そしてそのFacebookに載っている内容も献血している様子の写真だけなど、何のための広報なのか分からない状況でした。
そんな中で新たに広報部門に採用されたIT系男子が献血までの流れを説明する動画を作ったり、「赤血球製剤とは」など一つ一つを簡単に説明する広報を載せたりなど始めたため、私はこれをベタ褒めしまくってどんどんこういうのを作っていこうと背中を押しました。
その結果、フォロワーは2020年12月現在なんと約3600人にまで達しました。
ガボンの人口が200万人なのでなかなかな数字ですよね。
Facebookの存在を知らせるPOP、そしてそこで伝える充実した内容、この2つが相まってフォロワー数を増やし続けていると思っています。
ちなみに広報のデザインのクオリティが高まりまくっていて毎度驚かされます。
(1週間の献血者数や感染症結果の受け取りなどの施設サービスの利用者数を知らせる広報。いいデザインですよね!)
さて、ここからはコロナ禍で前進し続ける広報部門をはじめとする活躍内容についてお伝えします。
先に言いますが、凄いです彼ら。
1週間の新規感染者が500人を越える時期(特に6月が多かったようです)もありましたが、外出制限などの対策に冷静に従った結果最近は1週間で70人前後の新規感染者となり、11月30日までの累計感染者数は9191人で死亡者は59人とかなり落ち着いている状況です。
このコロナ禍での外出自粛に対応した取り組みが、「血液型と感染症の結果」の返却方法です。
それまで直接輸血センターまで来て結果を受けとりに来ていましたが、気安く外出できなくなった状況に対応し、なんとEメールでの返却サービスを始めました。
郵便がないガボンではこれは便利な方法です。素晴らしい!!
(Eメールでの返却開始をお知らせする広報。これもFacebookでしっかり広報されていました。)
次は、コロナ禍で減りそうな献血者を増やしつつ、自身の健康について意識させる取り組みとして、「献血カード」の発行が始まりました。これがまた素晴らしい!
(カードの見本)
このカードを保有することによって緊急時の自身の血液型証明として使え、血液製剤の1バッグが無料となるようです。他にも、医師の診察が無料、献血イベントへ招待など特典が結構ついています。
3回目の献血時にこのカードが発行されるため、とりあえず3回は献血しようとするリピーターを増やすことができるし、複数回の血液型検査によって血液型も確定できます。きちんと考えていますよね。
この取り組みは以前から構想を練られているのを知ってしましたが、実際に開始できたことに心から拍手を送ります。
最後は、大改装(笑)!!!
4月~6月で行われていたようですが、外出規制で献血者が減って施設に来る人が減ったことを上手く利用したようで大改装が実施されました。
(ホテルかと思うほどに綺麗になった待合室)
元々この時期にやる予定だったのかもしれませんが、規制がかかっているからと中止せずに見事にやり遂げた輸血センターには脱帽です。よくまあこの時期にやったな!と初めてZoom中継で見たときは超驚きでしたが、コロナに負けるどころか上手く利用する施設の姿勢と強さに尊敬の気持ちでいっぱいです。
でもこの改装費のために試薬が買えなくなったり、採血バッグの質が落ちたのはモヤモヤします。
こんな感じで、輸血センターは大躍進を続けています。
広報部門の活躍は今後も大期待ですし、確実にガボンの献血文化を定着させていく大きな存在になると思っています。
(あなたの血液型は何型?と聞いている広報。コロナに負けずに頑張っています)
次回はそろそろ締めに入ろうかなと思っています。