我らのガボン日記 ー臨床検査技師編ー

青年海外協力隊としてガボンで輸血医療向上を目指す臨床検査技師の日記

血小板製剤作製-赤血球をどう減らすか-

前回の更新からかなり経ってしまいました…

たんげ忙しかった、いや進行形で忙しいです。

この忙しさの諸悪の根源にもいつか触れます。

 

さて、以前書いた血小板製剤の作業工程見直し。

 

あれから2か月以上が経ち、ついにほぼ完成という形になりました。

ブログを書かない間にどんな進歩があったのか、さあ、これから説明します。

 

まず、第一の問題、「赤血球の混入」

 

 

最初の頃の製剤の外観。

赤いですよね。これは赤血球が多く混ざっているからなんです。

通常は黄色い製剤なので、作業見直しをしていることを知らない医師や技師たちから「こんなものを作っていったい何をやっているんだ」という批判を受けました。

もちろんこの外観では使用はできません。

 

ということで、赤血球の混入を減らす方法探しが始まりました。

 

・赤血球が多く残る製剤のバッグの上下の向きを逆さまにして軽遠心、下に沈んだ赤血球を別のバッグへ移す方法

・2回目の遠心後に上の血漿成分は捨てて(ハサミでチューブを切って流して捨てる)、中間層を別バッグに移して、下の層の赤血球は混入しないようにするなど

いろいろ試しました。

 

日本にいるベテラン輸血技師さんたちへも連絡をし、昔血小板製剤を作ったことはないか、何か方法を知らないか助けを求めました。

が、もちろん作ったことがなかったり、我々の施設も赤血球の混入が多くかったりなど、解決には至りませんでした。

 

血小板を作る3人組(私、製造部門長、若手技師)で毎日あれこれ話し、作成合戦まで始まり、誰が勝つだの負けないぞなど、賑やかに楽しく、でも真剣に試行錯誤を続けていきました。

 

左の人が製造部門長(この方も若いそして優秀)、右の人が若手技師で相棒イスマエル(とんでもなく優秀)

 

そしてある晩、ぼ~っと製剤バッグの絵を描いているとき(振り返ると家で一体自分は何してるんだと思いますが)、

ひらめきました。

 

3回遠心法!!!!

 

そもそも輸血センターの献血のバッグは写真のように3つ繋がっているバッグを使っていて、血液の中の欲しい成分を別バッグに移して製剤は作る原理なのですが、

 

チューブで3つ繋がっています。

 

別バッグへ移す分離作業はこんな感じ。圧力で別バッグへ移す原理です。

 

2回目の最終遠心のあと、通常であれば繋がっているバッグへ不要な成分を映して、切り離してそれを血小板製剤としていました。

 

が、思いついたのです。切り離しせずに、3回目の遠心をする方法。

 

簡単に説明すると、

① 遠心1回目:全成分が入っている血液から、血小板を多く含んだ血漿(PRP1)を得るための遠心。

② 分離1回目:PRP1を空バッグに移す

③ 遠心2回目:PRP1に入っている赤血球と血小板を下に沈め、赤血球の混入が少なく血小板を多く含んだ血漿(PRP2)を得るための遠心。

④ 分離2回目:PRP2を最後の空バッグに移す。

⑤ 遠心3回目:PRP2の血小板を下に沈めることと、血小板が少ない血漿(PPP)を得るための遠心。

⑥ 分離3回目:下に沈んだ血小板を残し、PPPを先程までの作業で使用済みの繋がっているバッグへ流す。

そしてその下に沈んが血小板が血小板製剤となる、という方法です。

 

分かりにくいですね。でもほんと、かなり画期的な方法を思いつきました。

 

思いついた翌日に、相棒イスマエルと早速話し合い。

全く新しい方法なので、遠心条件は自分たちで決めなければなりません。

各遠心条件を探り探りで決めて作業を進めたところ、

 

 

 

 

黄色い~!!!

 

ということで、この3回遠心法により赤血球の混入が限りなく抑えられた製剤が出来るようになりました。

 

 

我ながらすごい。

 

 

しかしここで新たな問題発生。

 

 

3回も遠心をして、血小板にストレスを掛け過ぎて、

「血小板の機能ははたしてあるのか」

そして、その不安を加速させるかのごとく登場した「血小板凝集塊」。

血小板製剤に、血小板の塊ができ始めたのです。

 

これが、その塊 

 

この問題をどう解決していったのか、

ここからが、本当の血小板製剤作りになっていった気がします。

 

 

今日はここまでで!

 

 

この血小板作製作業により、血小板3人組の仲はかなり深まり、

相棒イスマエルはもはや尊敬するほどにその優秀さを存分に発揮、

毎日の作業前の話し合い、作業後の振り返り、意見の出し合いなど、必然的にフランス語を話す時間が長くなったので以前よりも私の語学力も上がり、

充実した時間を過ごせています。

 

次は数日後に必ず更新します。