我らのガボン日記 ー臨床検査技師編ー

青年海外協力隊としてガボンで輸血医療向上を目指す臨床検査技師の日記

血小板製剤作製-スワーリング記念日-

ガボン国立輸血センターで作製している血液製剤には、

赤血球製剤、凍結血漿製剤、そして血小板製剤の3つがあります。

 

今回はこの血小板製剤にまつわる話第1弾をします。

 

血小板製剤はその名の通り、血小板を多く含んだ製剤のことをいいます。

白血病の患者さんや、手術で出血しているとき、などなど血小板数が少ない患者さんに出血を止める目的、あるいは出血を起さないためにこの血小板を輸血します。

 

日本では赤十字社が、成分採血という方法で血小板製剤を作製しています。

成分採血とは名前の通り、「成分」=「血小板」を採血することで、

血小板だけ(正確には血漿成分も)を献血者から採血するので、沢山の量の血小板を採取することができます。

 

では、ここガボンはどうかというと、

成分採血なんて豪華な機械はありません。

よって、全血つまり採血した血液そのものから血小板を分離して製剤にしています。

 

そしてこの分離の作業工程の見直しを先週から始めました。

これがもう、楽しくて楽しくて…笑

 

そもそもなぜ見直さなければならなかったかというと、

これまでの血小板製剤には血小板の姿かたちも見えなかったからです。

通常は、蛍光灯など光に製剤をかざしてみると血小板がキラキラと見えます。これを「スワーリング」といいます。興味がある方は日赤の動画をどうぞ。

www.dailymotion.com

ガボンの製剤では一度もこのスワーリングを見たことがなく、ただの血漿でした。

原因は血小板は低温に弱いのに4℃で遠心したり、強遠心を長時間したり、など一つ一つの作業が血小板作製には不適だったからです。

 

今回、日本赤十字社のご厚意で手順を教えて頂き、フランス語にし、

さあいよいよ始まりました血小板製剤作製。

 

初日!

 

気合十分で採血バッグを遠心機にセットし、軽遠心スタート。

 

さあ蓋をひらくと、

もはや殺人事件。しかも猟奇的。

 

バッグの一部が遠心機とぶつかり、破損。

内部で血液が飛び散って血の海となりました。

 

正確に言うと私がセットしたわけではないけど、私がやったということでみんな爆笑。

「あ~メイ~!やっちゃったね~!あはははは」

怒るわけでもなくこんな感じで一緒に掃除してくれ、大丈夫大丈夫となだめてくれ、内心は「いや、私じゃないんだけど」と思いながらもみんなの優しさに包まれて、初日終了。笑

 

 

そして2日目。

 

 

この日は地方の病院で同じく臨床検査技師として青年海外協力隊をしている方も合流。

この技師さんも日本ではバリバリに輸血検査をしていた輸血仲間。

世界で3人しか臨床検査技師はいないのに、そのうち2人がガボンで、しかも2人とも輸血が専門という奇跡。

この奇跡を活かしてこの日は一緒に血小板作製をしました。

別の協力隊の方も見学に来ていたので、写真撮影もバッチリ。完璧。

 

手順の変更は主に3つ。

まずは、温度管理。

つぎは軽遠心の条件調整。

最後は重遠心の条件調整。

 

 

軽遠心の条件に苦戦し、複数のパターンで遠心。

 

 

協力隊の技師さんと、センターのイケメン若手技師イスマエルと一緒に、ワクワクしながら作業し、

 

重遠心をし、血小板の姿を確認。 目が真剣。

 

重遠心が終了して不要な血漿成分を除去すると、

 

 

「っっっあ!」

 

 

 

「きゃーーーーーー!スワーリング!!!!!」

 

 

嬉しすぎてイスマエルから「落ち着いて落ち着いて」と言われるくらい、大興奮。

 

初めて見るスワーリングにガボン人技師さんたちも笑顔。

その笑顔を見て私もさらに嬉しくなりさらに笑顔。

 

久々に見る血小板の姿に嬉しすぎて日本人2人でニヤニヤ。

この写真大好きです笑

 

 

こうして、2019年2月26日は「スワーリング記念日」となりました。

 

 

この血小板製剤、

赤血球が混入しすぎで製剤としてはまだまだだけど、以前に比べたらそれはもう大きな進歩。

ガボンの輸血の歴史が変わる一歩となった気がします。

 

 

それから毎日作業をし、

あれこれ試行錯誤し、話し合い、論文を探し、作製合戦まで始まり、

朝から晩まで、夢の中でも血小板作製をするくらい、一日中血小板の事を考える日々を過ごしています。

これがもう、楽しすぎて、幸せな日々です。

 

 

そして今回感じたのは、

フランス語をろくに話せない若造の私の意見を聞き入れ、

やりたいように作業させてくれ、

その作業を一緒にやって見てサポートしてくれ、

私の拙い説明を一生懸命聞いて理解してくれ、

言ってないことまでも理解してくれ、

私の技術と知識を学ぼうとする検査技師仲間に恵まれたということです。

彼らと一緒だから楽しいと思えるのだと思います。

 

そんな彼らを大切に、今後も活動を続けていきます。

 

↑ 言っていないことまでも理解する最強イスマエルとのひとコマ。この写真好き。

 

そして血小板作製のその後は次回書きますね。

多すぎる赤血球はどうなったか、こうご期待。(マニアックすぎる)