我らのガボン日記 ー臨床検査技師編ー

青年海外協力隊としてガボンで輸血医療向上を目指す臨床検査技師の日記

勝負

日本への一時帰国でブログを宣伝したことにより、サイトへの訪問者数が急増し、嬉しい限りです。ありがとうございます。

がんばって書きますね~。

 

今日6月11日は突如舞い降りてきた勝負の日でした。

 

ガボン国立輸血センターでは、献血者と患者さんともにRh血液型を毎回検査しています。

Rh血液型とは、ABO血液型の仲間的なもので、C、c、D、E、eがあります。

ちなみに「私、血液型、B/+」というときの「+」は「Rh D+」という意味になります。

RhのD抗原はとっても重要なものなので、ABOの血液型を検査するときはこのDについても検査をしています。

ですが、そのほかのCcEeについては毎回検査をする必要はありません。

骨髄移植、臍帯血移植を受けない限り、変わることはありません。

 

そして検査に使う試薬、高いんです。

計算してみたところ、1回の検査コスト

ABO血液型は175fCFA (日本円で約35円)

Rh血液型は2046fCFA(日本円で約409円)

おいおいおい、2000 fCFAあればがっつり昼ご飯食べられるよという感じです。

 

私はこのRh血液型の複数回検査の不要さを半年以上訴えてきましたが、なかなか事が進みませんでした。

 

がしかし、今日ついに事が動き始めました。というより、動かしました。

 

「さ~て今日は血小板24袋作るぞ~」とルンルンでセンターに行ったら、言われました。

 

「Rhの試薬がないから血小板作っても意味ないよ」

 

「は?」

 

実はこの事態、先週から始まっていました。

 

「Rhがもう分かっている複数回献血者なら検査する必要ないよね?」

 

これを説明しても、「でも決めるのは私じゃないから」で終了。

 

そもそも試薬管理の甘さもそうですが、血小板製剤の在庫がゼロの状態を危惧しないこの姿勢に苛立ちました。

 

「アフリカはこうなの、difficile(難しい)のよ」

 

いつも言われるこの言葉に今日はやたらと腹立ち、そして反抗心が湧いてきました。

 

今あなたの家族が出血していて、でも血小板が無いから死んだらどうすんの?何思うの?

 

ものが無いのはよく分かる、でも無いなら無いなりの努力はしようじゃないか。

最小限のもので最高のものをつくろうじゃないか。

 

なんだか今日は闘争心がメラメラ湧いてきて、勝負に出ることにしました。

 

カウンターパート(公式な仕事のパートナー)に、

「今がまさに、事態を変えるチャンス」

と伝え、主要技師と話し合い。

 

なんと運がいいことに、今日は各部門の主任を集めた会議があるからそこで説明をしてくれという提案。

この機会を逃してたまるかと、主任会議に出席。

 

今、試薬が無いせいで血小板の在庫はゼロ。検査検体はたまりまくり。

そもそもRh血液型は一生で変わらないのに複数回検査するのは、時間と金の無駄。

今がそれを変える機会じゃないですか?

 

言ってやりました。内心ドキドキ。

 

全ての判断はDG(施設長)にゆだねられます。

が、DGははっきりとした宣言はせずに医者に任せました。

 

この会議では結果的に、身分証明書を使って本人確認を確実に出来るようにしてからこのRh複数回検査の廃止を行うという結論になりました。

 

もしこれが3か月前の私なら「いぇ~い上手くいった」と喜ぶでしょう。

 

が、今の私は違います。

「そんな簡単な言葉、誰が信じるか!」

 

具体的な数字や期限、方法を述べないときは大抵話が流れるあるいは時間がかかります。

 

ガボンに来てもうすぐ1年。この国を理解し始めてきました。

 

今回、闘争心メラメラの私はさらなる勝負に出ます。

 

まずは権力者たちを味方にしました。

 

判断をゆだねられた医師、センターのNo2(大統領一族の関係者)、カウンターパート、よく理解してくれる技師たち、この人々を味方にとり、詰め寄り、今後どういう経過をたどって廃止までもっていくかを私の口からではなく彼らの口から言わせました。

 

ずいぶん成長しました私。

 

これでも足りないと思った私は、食いちぎる勢いで食い下がります。

お金大好きなDGには、廃止による具体的な削減コストを提示すればいいだろうと思い明日はセンターNo2と計算祭りをします。

 

長年の無駄な検査を変えることができるか。

 

まさに、これは勝負です。

 

いかなる決着がつくか、楽しみです。

 

ちなみに、試薬は無いけどパソコンシステムを変えるから明日から血小板作ってと言われました。

あ~、一安心。