我らのガボン日記 ー臨床検査技師編ー

青年海外協力隊としてガボンで輸血医療向上を目指す臨床検査技師の日記

ガボン国立輸血センター①-献血 part1 -

今回からシリーズでガボン国立輸血センターの詳細をお話します。

ガボン献血と輸血の詳しい仕組みを日本人で初めて(多分世界でも初?)公開していきます。

 

これを見て、このセンターでの活動に興味を持ち、私の次の2代目のJICAボランティア隊員になってここで活動してくれる人がいますように!

 

ガボン国立輸血センター(Centre Natinal de Transfusion Sanguine)》

通称CNTS(セー エヌ テー エス)と呼ばれる、国内唯一の献血および輸血医療を担う国立機関です。

職員数は97名。他にも学生さんが実習に来ているので、軽く100人は超えています。人数が多すぎて名前が未だに分からない、というか会ったことも無い人もいます(笑)

職員の内訳は医師4人、看護師10人くらい、検査技師20人くらい、そのほかは受付、清掃、経理、人事、データ入力、健康保険の人などなどです。

男女比は半分半分という感じで、各部門の責任者には女性も多く、特に専門職に関しては年齢や性別関係なく、実力重視の人事になっています。

全体に職員は若めなのですが、特に検査技師は学生も含めると20代~30代の人が多く、年齢が近いこともあって雰囲気も良く私も仲間に入れてもらってわいわい賑やかにやっております。

年間の予算は2019年は7億 FCFA(日本円で1億4千万円)ですが、年によって変動があるようです。

 

ここからは献血部門について説明していきます。

 

まず「献血」制度についてですが、ここに献血をしに来るドナーは2種類います。

① 善意で自主的に血をあげる献血(日本の献血と同じ) 

② 家族や友人が輸血を受けたので「輸血製剤1バッグにつき2人を連れてくる」という制度で連れて来られて血をあげる半強制的な献血

に分けられます。アフリカの国々のでは①が多くなってきているそうですが、ガボンはこの②の献血が7割を占めており、まだまだ献血文化が根付いていないことが分かります。

 

では、輸血センターの内部に入っていきます。

 

これがガボン国立輸血センターの外観

献血する人たちの方の建物)

 

(輸血製剤を取りに来た人用の建物)

結構立派な建物ですよね。

 

センターの入り口のドアを開けると...

 

①受付 

 

 

こんな感じです。綺麗。

前回お話した通り、外見重視の国民性が存分に発揮されています。

 

ここで、身分証明書を提出し受付の人が生年月日や住んでいる地域、電話番号などの個人情報を献血&輸血管理システム(フランスのシステム)に入力します。

受付が完了すると、問診票を渡しドナーに記入してもらいます。

 

ちなみに献血できる年齢は18~55歳です。

 

 

②問診票記入

 

その問診票がこちら。

 

ざっと質問内容を上げていくと、

・過去に輸血を受けたことがあるか?

・最近体調を崩していないか?

・過去にどんな病気にかかったか?

・過去6ヶ月以内に新たなパートナーと性的接触があったか?

・今まで献血をしたとき、具合は悪くなっていないか?

などなどです。

 

日本で献血するときは、海外から帰国して4週間以内の場合や、ある地域の国への滞在歴がある場合は一定期間献血が出来ない期間などがありますが、このセンターではその類の質問は一切ありません。

ちなみに私はアフリカに1年以上長期滞在しているので帰国しても3年間は献血できません。残念。

マラリアにかかったことがある人も日本では献血できませんが、この国では出来ます。というか、もし「マラリア既往の人NG」にすると、誰も献血できません(笑)。

日本赤十字社の皆さん、もし何か間違いがありましたらご指摘ください。

 

これらの質問をこの部屋で記入していきます。

 

ひとつ感心したのが、ドナーの来た順番を守るために番号を用いることです。

この番号に従って次のブースへと誘導しているので順番をめぐってドナーから文句が出ることはありません。すばらしい。

 

 

③ 体重血圧測定&ヘモグロビン検査

 

体重、血圧を測り、献血できるかどうかの判断をするヘモグロビンの値を簡易検査キットで検査します。

 

(血圧計、消毒用アルコール、廃棄ボックス、Hb測定機器などなど )

 

日本では献血をする前に針を刺して採血して検査しますが、ここでは指にプチっと小さい針を刺して少量の血液で検査します。

ドナーへの負担が少ないのでいいですよね。

 

きちんと手袋もし、血液の付いたキットは感染性の廃棄ボックスに入れています。

すばらしい。

 

ここにいて分かったのですが、高血圧の人と貧血の人が結構多いです。とくに高血圧は若い人でもかなりいます。

 

ちなみに、日本ではこういう検査をするのは医療者ですが、ここで検査をしているのは看護師のときもあれば受付の姉ちゃんのときもあり、誰でもいいそうです。あはは。

 

 

④問診

 

次は医師の問診です。

 

質問は、

・身分証明書と本人が一致しているかの確認

・これまで献血したことがあるか

・最近体調崩してないか、薬飲んでいないか

など簡単に聞いた後、一番大事な質問をします。

 

「性的パートナーは何人いるか?」

 

ほーーーーー!いるかいないかではなく、何人という質問の仕方!

 

ドナーは「え?なんて?」と聞き返し、堂々と答える人もいれば、なんでこんな質問をするんだと不機嫌になる人もいます。

 

ちなみに何人の答えは「1人」という人が半分、「2人」という人が4割くらい、「3人以上」という人が1割くらいです。

男の人は「2人」と答える人が多いですね~。

たまに女の人でも「2人」と答える人はいます。

「いない」と答える人は今のところ見たことがありません。

みなさん活発ですね。

 

何人を聞いた後はそのパートナーとはいつから関係をもっているかの質問をして、3か月以内のパートナーであれば献血を断っています。

 

日本でも献血をすると質問項目にはこのようなものがあります。

「6ヶ月以内に不特定の異性または新たな異性との性的接触があるか?」

 

なんでこんなことを聞かれるのか、不快に思う人も多いと思いますが超大事な質問なのです。超大事なので、「責任ある献血」を推進するために軽く説明します。

世の中には多くの感染症がありますが、その中には血液や体液によって感染するものがあります。HIVB型肝炎C型肝炎もその仲間です。献血していただいた血液は安全なものかどうかを確かめるためにこれらの感染症の検査をもちろんします。が、残念ながら検査には限界があります。

感染したての初期の頃では、その感染症のウイルスは体の中に少ししかいません。この少量のウイルスでは、悔しいことに検査でウイルスの存在をつかみ取ることができないのです。例えば1kgの米があったとして、虫に食われた黒い米が1粒だけなら見逃すけど、黒い米が1000粒だったら見つけて「この米良くないな」と分かりますよね。それと一緒です(例えが下手かもしれない笑)。つまり感染初期では、感染してウイルスがいるのに、検査の結果が陰性になってしまうのです。この血液が患者さんの体に輸血されてしまうとどうなるか。残念ながら、感染してしまう可能性が大いにあるのです。

なぜ性的接触のことを聞かれるのかというと、性行為でこれらの感染症に感染する可能性があるからです。新しいパートナーと性行為し、もしその人が感染症陽性だったら、その相手も感染症をもらう可能性があります。それがもし初期だったら…。自分も気付かずに、悪気も無く、患者さんを危険にさらす可能性があるのです。

この感染初期の、ウイルス量が少なく検査では陽性にならない時期の血液を避けるために、「6か月以内の性的接触」の質問項目があるのです。

 

なので、日本もですが、ガボンの輸血センターでもこの項目について厳しく判定しています。

 

⑤採血

いよいよ採血です。

が、このまま続けると長くなるので次回にします!

 

日本でもなかなか見れない領域だと思うので、質問大歓迎です。

 

ということで、次回もまた献血部門についてお話します~