ガボン国立輸血センター④ −感染症検査部門-
前回の血液型検査に引き続き、ラボについてお話します。
2つ目のラボは「感染症検査(Sérologie)」です。
献血された血液は、血液型検査の他に、感染症の検査を実施します。
この感染症部門ですが、私はここではあまり活動していません。私が感染症検査系の知識に弱い&改善できることが少ないように思えたので、前半の時期に現状把握のため1ヶ月間過ごしたくらいです。よって前回のように、あまり詳しく説明できません。
最後に感染症の陽性率を発表しますので、どのくらいか、何が1番陽性率が高いか予想してみてください。
ではいきましょう!
フランス語は灰色です。
このラボで検査している項目は4つ。
・HIV検査(抗原/抗体)VIH
・B型肝炎ウイルス検査(HBs抗原)Hépatite B
・梅毒血清学的検査(TP抗体) Syphilis
(抗体;Anticorps 抗原;Antigène)
・梅毒血清学的検査
・B型肝炎ウイルス検査(HBs抗原、HBs抗体、HBC抗体)
・HTLV-1抗体検査
・ヒトパルボウイルスB19検査
さらに核酸増幅検査で、
・B型肝炎ウイルス検査
・C型肝炎ウイルス検査
・HIV検査
です。
詳しく知りたい方は、日本赤十字社のHPをどうぞ!
検査|安全な血液の供給のために|血液事業|活動内容・実績を知る|日本赤十字社
いつも日赤さんのHPや学術情報には大変お世話になっております。丁寧に分かりやすく、しかも見やすく情報提供する技術は、日本人のおもてなし精神が根本にあるからなんだろうなと感じます。日本最高。日赤さんいつも本当にありがとうございます。
さて、検査の部屋はこんな感じです。
(検査が終わって静かな様子)
結構きれいに整頓されています。
5Sはもうすでに、このセンサーでは出来上がっています。
検査の種類はELISA法。
日本のようなNAT検査は行っていません。
寄生虫関連もやっていません。
もちろん日本赤十字社のように、健康診断並みの血液検査はやっていません。
日本は肝機能とかもサービスでやっているというと、みんなとんでもなく驚きます。
この4つの項目を自動化、とは程遠い、用手法で検査をしています。
日本のように、遠心して搬送ルートに置いたら自動に検査して結果もシステムに飛ばしてくれる自動化が恋しいです。
手で一つ一つ分注してELISA法を行い、
(写真撮るのを思い出して行くと、いつももう既に検査を終えているという相性の悪さ)
結果はこの機器で数値化し、
陽性か陰性か判定しています。
でも、この機器、よく壊れます。
もう一つ、別の部屋にはCobasがあります。
技師の皆さんは、おーコバス!となりますよね。
CobasはRocheと日立の機械です。どこにでも日本の機械があるのは嬉しい&誇らしい限りです。日本で病院勤務をしていた頃、このCobasを検査室で扱っていたのでガボンで再会できた時は感動でした。
このCobasは、先程のELISAに比べては自動化されていて、番号を入力すれば検査してくれるので他の機械に比べたら便利で助かっています。
が、機械の後ろから水が垂れ流しになっているときがあったり、動かないときがあったり、いくら日本製といえどもメンテナンスなしで使い続けると不具合を生じるのは避けられないようです。
メンテナンス問題、深刻です。
もうひとつVidasという機械もあります。
がこの機械はよく分かりません(笑)
(よく知らないVidas)
このように3種類の検査方法で検査しているのですが、試薬の状況、機械の状況、急ぎ具合などにより方法を選んで検査しています。でもELISA法がメインのようです。
以前はELISA法とCobas両方で検査し、結果が違う場合翌日もう一度検査というようにしていましたが、現在は違うようです(詳細不明)。
検査の結果が出ると、前回の血液型検査と同じく、結果を輸血システムに手入力して完了です。
この感染症の結果は、2週間後にドナーに返却しています。(Rendre de résultat)
でも日本のように郵便システムはないので、結果を取りに来たドナーにだけ返却しています。
陽性のドナーは個室に移され、医師と面談をします。
無料で感染症と血液型の検査を受けられるのは貴重な機会なはずなので、この検査結果返却システムをもっと上手く宣伝に使うのはありだと思っています。
そしてぜひお見せしたい写真があります。
これ、蒸留水(L’eau distillée)の機械です。(笑)
怪しさ満点です。
そしてその蒸留水を入れているボトル
いやもう、アウトでしょ(笑)
一日の検査の件数は、日にもよりますが80人前後で、この検体(多い日は200人近く)を一つ一つ手で検査しています。なかなか大変な作業ですが、黙々と真剣に検査をしています。
ここで働く技師は3名、研修生が3人くらい?という感じです。
なぜかこの部門の技師は辞めていく人が多く、すでに3人が去っていきました。
3人とも優秀な技師だったので残念です。優秀だからこそ、もっと様々なことができるラボに行きたかったのでしょう。
そしてこのラボ、実は大きな問題を抱えています。
それは、
「試薬不足」。
センターにお金が無くて試薬を買えず、検査できないということが頻発しています。
「Pas de réactif(試薬ない)」という言葉がよく飛び交う場所です。
お金が無いと言われると、もうどうしようもありません。待つしかありません。
あれこれいうと「じゃあ日本が買ってよ」という言葉も出てきて好きじゃないのであまり口を出さないようにしています。
「これがアフリカ」
よくここのセンターの人たちが言う言葉を受け入れざるを得ない現実です。
ひどいときは2週間ほど試薬を買えず、血小板製剤の在庫がゼロの状態が続きました。日本では考えられない非常事態ですが、ここではいたって普通の事です。
アフリカ、厳しいです。
5月の一時帰国で、輸血学会でガボン国立輸血センターでの活動内容を発表した時、座長の先生から「マラリアは検査していないのですか?」と質問を頂きました。
たしかにやるべきではあります。でも、お金がありません。
安全はお金で買うものなのだと、悲しいですが、痛感します。
以前紹介したランバレネにあるシュバイツァー病院では、HIV、HBV、HCV、梅毒の他にマラリアとミクロフィラリアの検査もしています。方法はイムノクロマト法、顕微鏡での検査です。ランバレネは川がそばにあるのでミクロフィラリア陽性が多いそうです。前回の見学で、うにょうにょ動く生きたミクロフィラリアを生で見ることができました。感動。
動画で撮ったので欲しい方いたらあげます(笑)
ではこのラボでの感染症の陽性率を発表します。(2017年の結果)
年間採血数(19385件)から計算した感染症の陽性率は、
約8%です。
感染症陽性順位
1位 HBV 869件
2位 HIV 401件
3位 梅毒 383件
4位 HCV 137件
2つ以上に感染している人もいて、合計1484人が年間で陽性判明しました。
なかなか高いですよね。この環境で検査することが正直怖いです。
献血できるくらい健康な人のはずなのにこれだけの陽性率であれば、すでに感染症陽性と分かっている人も合わせた国全体の陽性率を考えると、軽く10%は超えると思います。
地味に、静かに、深刻な問題です。
以上、ラボでした!
次回はセンターシリーズを一旦休憩し、そろそろ協力隊の2次隊の皆さんが任国へ向けて荷造りを始める頃だと思うのでガボンに持ってきてよかったものなどなど書きます。
同期ブログと同期助産師さんのブログも更新されているのでぜひご覧下さい!
同期ブログ 『ガボンマタン』
ではまた~